春の日の香り
アーティスト
制作年
2015年エディション
オリジナルメディア
油彩 色鉛筆 on キャンバス作品サイズ
91.0(H)x91.0(W) x0.0(D)cm作品価格
¥231,000 (税込)※額はありません。
作品価格によらず月々のレンタル代は4,800円から。
アーティスト紹介
架菜梨案
架菜梨案の作品は「出来事」にあふれている。愛らしい小動物や植物、衣服をまとわない人物など、オーガニックなモチーフが、ときに不自然な重なりを見せながら、キャンバスという、〈奥行き〉の無い、限られた平面のなかにちりばめられている。その画面は〈前景〉や〈後景〉という概念を通用せず、全体として統一されるべき配置をもっていない。そのことは、あらかじめ構想を用意しないで、筆の赴くままにイメージを表現する作者の態度を知らせるが、それにもかかわらず、絵画を構成する形象は、きわめて有機的に調和しているのである。彼女の筆致は上描きされることがほとんどなく、線が交差する様子さえ認められない。架菜梨案は、まず画面全体に絵具をひろげ、その上を色鉛筆で引っかくことで描画し、絵画を制作している。そのため、筆触同士が折衝する場処で、一方を損ねてしまわないためか、彼女の絵筆は停止し、ある「かたち」が、つぎの描線の終点を――あるいは、逆に、いくつかのストロークが、そのとなりに描かれる形象を――運命づける。そのようにして、キャンバスの上ではモチーフが互いを成形し合い、画面は必然的な展開を見せるのである。
このことは、《フルーツタルト》などの小作品に見られる、もうひとつの手法にも一貫する。そこでは、まず画面の中央にモチーフが描かれ、その周囲を一色の絵具がキャンバス全体に伸びるが、領域をせめぎ合う輪郭のあいだには、未完のイメージを――自ら補完し――縁どるための余白が生じている。この、遠慮深くもその筆先を停止させることで、なにも描かれなかった余白こそ、彼女の絵画に通底する、筆触同士の交渉が表れた本質的な場処であり、それによってキャンバス上で自由に展開される、架菜梨案の「物語」の方法なのである。
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