作家紹介
架菜梨案の作品は「出来事」にあふれている。
愛らしい小動物や植物、衣服をまとわない人物など、オーガニックなモチーフが、ときに不自然な重なりを見せながら、キャンバスという、〈奥行き〉の無い、限られた平面のなかにちりばめられている。その画面は〈前景〉や〈後景〉という概念を通用せず、全体として統一されるべき配置をもっていない。そのことは、あらかじめ構想を用意しないで、筆の赴くままにイメージを表現する作者の態度を知らせるが、それにもかかわらず、絵画を構成する形象は、きわめて有機的に調和しているのである。彼女の筆致は上描きされることがほとんどなく、線が交差する様子さえ認められない。架菜梨案は、まず画面全体に絵具をひろげ、その上を色鉛筆で引っかくことで描画し、絵画を制作している。そのため、筆触同士が折衝する場処で、一方を損ねてしまわないためか、彼女の絵筆は停止し、ある「かたち」が、つぎの描線の終点を――あるいは、逆に、いくつかのストロークが、そのとなりに描かれる形象を――運命づける。そのようにして、キャンバスの上ではモチーフが互いを成形し合い、画面は必然的な展開を見せるのである。
このことは、《フルーツタルト》などの小作品に見られる、もうひとつの手法にも一貫する。そこでは、まず画面の中央にモチーフが描かれ、その周囲を一色の絵具がキャンバス全体に伸びるが、領域をせめぎ合う輪郭のあいだには、未完のイメージを――自ら補完し――縁どるための余白が生じている。この、遠慮深くもその筆先を停止させることで、なにも描かれなかった余白こそ、彼女の絵画に通底する、筆触同士の交渉が表れた本質的な場処であり、それによってキャンバス上で自由に展開される、架菜梨案の「物語」の方法なのである。
推薦するキュレーター
飯盛希
Web
http://kanariaroom.web.fc2.com/
プロフィール
2011年 多摩美術大学 美術学部 絵画科油画専攻 卒業
2015年 ボザール・ド・パリ 入学
個展
2010年 架菜梨案個展(ギャラリー銀座フォレスト)
2011年 架菜梨案 Painting Exhibition(ZEN FOTO Gallery)
2012年 Kanariaradiance(ZEN FOTO Gallery)
2013年 Song of Songs(ZEN FOTO Gallery)
2014年 目覚めるか夢みるための祈祷(ZEN FOTO Gallery)
2015年 Rendez-vous sur l'Horizon(ZEN FOTO Gallery)
グループ展/アートフェア参加等
2012年
ワンダーシード2012(トーキョーワンダーサイト渋谷)
39advance展(Gallery 工房 親)
ART KYOTO 2012 -アート京都2012-(京都 ホテルモントレ ZEN FOTO Galleryブース)
Strange Stories展(ZEN FOTO Gallery)
2013年
ワンダーシード2013(ワンダーサイト本郷)
第一回 損保ジャパン美術賞展 Face(損保ジャパン東郷青児美術館)
ワンダーウォール2013(東京都現代美術館)
絵画を考える -colors-(Gallery 工房 親)
空想美術大賞展(伊藤忠青山アートスクエア、京都 蔵丘洞画廊)
Dアートビエンナーレ展(堀科学芸術振興財団)
2014年
春韻展(Gallery 工房 親)
絵画を考える -素材・技術- (Gallery 工房 親)
INTRO 2 アートコレクター山本冬彦が選ぶ若手作家展(The Artcomplex Center of Tokyo)
架菜梨案個展 ART OSAKA2014(グランヴィア梅田 Gallery工房 親ブース)